講演「市民からの持続可能性アセスメント」

講座:市民からの持続可能性アセスメント 全体会
SDGS万博市民アクション 全体会 第一部
2024年11月21日19時~@大阪ボランティア協会
話題提供:傘木宏夫(NPO地域づくり工房代表理事、環境アセスメント学会常務理事)

1. 持続可能性アセスメント(SA)と現行の日本のアセスメント

持続可能性アセスメントは、ロンドンオリンピックが第一号。ミラノ万博も実施した。
持続可能性アセスメント(SA)…環境を土台に社会経済の統合を共同で進めるためのコミュニケーション…計画事業の意思決定、何を調べれば評価できるか、扱う情報を整理、評価方法を整理、関係者を巻き込んで点検改善。複数案の比較検討を繰り返し、より資する計画事業の実現を図る。
日本で持続可能性アセスはできておらず、この万博でもできていない。
今のアセス制度は行政の縦割りのため、環境のみが対象だ。事業の社会・経済などへの影響を予測評価した制度になっておらず、犯罪、経済、財政といった、住民の関心に答えていない。PI(パブリック・インボルブメント)はあるが意見を聞くだけになってしまっており、「意見が出た」と公表するだけでキャッチボールができていない。さらに、企業の事業活動に対して、市民がどうアプローチすればいいのかもわからない状況だ。

2. 市民からの持続可能性アセスメント

  1. 開発事業…従来のアセスに正・負の影響を整理し、安心、災害といった視点で事業者と対話を図り、自主的な取り組みを促したりすることで、持続可能性アセスの目指す姿に近づける
  2. 国・自治体の政策や計画…戦略的段階からアセスを実施するように働きかけていく。賛否ではなく、より客観的な検討がされているか点検する。
  3. 企業の経営戦略…自分たちの地域や活動分野で大きな影響力を持つ企業が、持続可能性の観点から、どのような方針・計画を持つか把握し、協働への糸口へ。サステナビリティレポートの活用、質問する。ISOを取得している場合は、認証機関に情報提供して適切な対処を働きかける手もある。
  4. 自らの市民事業…市民が実施する計画・事業に対して自主アセスを実施することで、地域社会の理解や協力を広げ、対話を通じてよりよい実施を目指す。
ISOでは、ステークホルダー、事業者と一般市民のコミュニケーションが義務付けられている。大阪万博もISO取得を目指しており、ステークホルダーが位置付けられている。今後、ISOを取得した場合は、そのことをテコに働きかけることも検討すべきだろう。
「4.自らの市民事業」の事例として、倉敷市公害患者と家族の会による水島再生プランがある。再生プラン25年目に、活動再点検に自主アセスを実施した。公害患者から今の暮らしぶりを聞き取るなど現状データを分析し、計画案を策定した。商工会議所など他のステークホルダーにも、大気・経済・水質・福祉・地域・患者への対策が十分かなど、聞き取りを行った。その上で、国外での再生を参考に「2030年の水島こうなったらいいな」と題し、これまでの活動を再評価した。2030年を目標に、自分たちが把握できる数値目標、評価指標を設定、SDGsと紐づけた。2030年までモニタリングする方法書を策定し、数年ごとにチェック、進捗管理していく。

3. 大阪・関西万博に対する市民からの持続可能性アセスメント

大阪万博で市民からの持続可能性アセスメントの、私の案はこうだ。
今年度は計画書を読み込み課題分析、評価方法を検討し、年度末までに万博計画に対する評価書を作成する。2025年度はその評価書に基づき、開催中に実施状況を観察、万博開催で大阪がSDGs達成に資するとうたっており、大阪がどう変わっているのか、課題分析・評価していく。万博終了後、実施状況への評価書、事後調査計画書を作る。
2027~2030年度、国・府市などに継続調査を提出、最終評価書を市民側から評価する、といったものだ。
目的は、大阪万博に対し評価する。大規模イベントの意義や課題を市民の立場で発信する。さまざまな分野の市民活動や研究者が連携し、協働で調査を行うこと。
成果は、大規模事業に対する市民からの点検・評価の手法が提案できる。今後、開発問題が生じた際、連携できる。また日本の持続可能性アセスの定着への布石となることだ。