EXPO 2025 大阪・関西万博  持続可能性に配慮した調達コードへの提言

EXPO 2025 大阪・関西万博  持続可能性に配慮した調達コードへの提言 お知らせ
2024年10月29日

SDGS万博市民アクション 持続可能な調達分科会
ウータン・森と生活を考える会
NPO法人AMネット
一般社団法人 熱帯林行動ネットワーク(JATAN)
持続可能性に配慮した調達コード
https://www.expo2025.or.jp/overview/sustainability/sus-code/

共通基準の提言

  • 前提として、今後のレガシーとしてわざわざこのような調達コードを作ったのであれば、野心的な目標であるべき。持続可能性に関する基準を満たしているかどうかを事務局が判断して一定のパフォーマンス基準を設けた方がよい。それができないのであれば、持続可能性に配慮している=必ずしも持続可能であることは担保できなくなってしまうため、「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準」等と表記すべき。
  • 調達先の製品レベルの評価だけではなく、調達先の企業や企業グループレベルでリスクを判断するために、人権侵害や森林破壊に関与してNDPE(森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止)基準違反や、汚職や脱税を含めて、違法性に関与する企業グループについては、企業レベルのデュー・デリジェンス(調達元の企業が自社や取引先を含めたサプライチェーンの環境・人権リスクを特定し、責任をもって予防策や是正策をとること)を実施させる必要がある。参考:NDPE方針については、以下のリンクを参照 https://japan.ran.org/wp-content/uploads/2023/10/JP-NDPE-briefing.pdf
  • 木材と紙はFSCの関係断絶方針に準拠することで対応できるが、認証のみに頼らずNDPEの採用と順守、トレーサビリティなどの情報開示が必要である。参考:https://japan.ran.org/wp-content/uploads/2023/10/JP-NDPE-briefing.pdf
  • サプライヤーの遵守状況への苦情情報(グリーバンス・システム)を広く収集するには、調達先のサプライヤー情報を開示する必要があるので、サプライチェーンの情報開示が重要になる。よって、万博に物品を提供している企業リストも公表する必要がある。 参考:パリ五輪の調達コード:https://olympics.com/ja/paris-2024/committee/our-responsibilities/sustainable-purchasing
  • 環境2.4「バリューチェーン全体を通した温室効果ガスの低減に寄与する原材料等の利用」にScience Based Targetsイニシアティブ(SBTi)の取得に取り組むことを明記すべき。
  • 環境 2.9「資源保全に配慮した原材料の採取」に 以下を追加:企業としてNDPE(「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止」)方針の遵守のコミットメントを加えて確認することが必要。
  • 11の通報受付対応について追加:対応する担当は事実確認を含めて、独立性を確保しないと、サプライヤー側に立つような基準の解釈や判断を行われる可能性があるので、担当者の独立の確保の規定を追加。

木材基準への提言

(19ページを参照)
2. 上記 1 の木材について、持続可能性の観点から以下の①~⑤が求められる。なお、 サプライヤーはコンクリート型枠合板については再使用の促進に努め、再使用する場合で
も1~5を満たすことを目指し、少なくとも①は確保されなければならない。
  1. 伐採に当たって、原木の生産された国又は地域における森林に関する法令等に照らして手続きが適切になされたものであること
  2. 中長期的な計画又は方針に基づき管理経営されている森林に由来するものであること
  3. 伐採に当たって、生態系が保全され、泥炭地や天然林を含む環境上重要な地域が適切に保全されており、また、森林の農地等への転換に由来するものでないこと
  4. 森林の利用に当たって、先住民族や地域住民の権利が尊重され、事前の十分な情報提供に基づく、自由意思による合意形成が図られていること
  5. 伐採に従事する労働者の労働安全・衛生対策が適切に取られていること
(提言)
  • 木材調達において、農地だけではなく、産業植林地への転換によって天然林が失われてしまうので、基準②に、「天然林のパルプ材など植林地への転換に由来するものではないこと」を追加すべき。
  • サプライヤーには、森林破壊ゼロを誓約し、NDPE方針の採用と遵守を求め、実施状況の報告することを義務化させる必要がある。NDPE方針の適用は、調達対象とする製品レベルではなく、サプライヤー企業レベル、サプライヤー企業グループレベルで適用することを求める必要がある。
  • FSCから絶縁措置(Disassociation)を受けている企業グループについては、企業として問題があるので、たとえPEFCを取得していても、あるいはNDPE方針を採用していても、調達対象とすべきではない。

紙基準への提言

(23ページを参照)
博覧会協会、ライセンシー及びパビリオン運営主体等が調達する物品・サービス等に使用される紙については、「持続可能性に関する基準」が適用されるほか、持続可能性の観点からの個別基準を以下のとおり定める。ライセンシーは、ライセンシー直接契約事業者と締結する契約において、ライセンシー直接契約事業者による本個別基準の遵守が確保されるように、必要な内容を仕様書に記載する等の措置又はその他の適切な措置を講じなければならない。また、パビリオン運営主体等は、パビリオン直接契約事業者と締結する契約において、パビリオン直接契約事業者による本個別基準の遵守が確保されるように、必要な内容を仕様書に記載する等の措置又はその他の適切な措置を講じなければならない。
2 持続可能性の観点から以下の(1)~(3)が求められる。
  1. 古紙パルプを、用途や商品の性質等に応じて最大限使用していること。
  2. 古紙パルプ以外のパルプ(以下「バージンパルプ」という。)を使用する場合、その原料となる木材等(間伐材、竹・アシ等の非木材、和紙用のこうぞ・みつまた等を含む。製材端材や建設廃材、林地残材、廃植物繊維は除く。)は以下の1〜5を満たすこと。
    1. 伐採・採取に当たって、原木等の生産された国又は地域における森林その他の採取地に関する法令等に照らして手続きが適切になされたものであること。
    2. 中長期的な計画又は方針に基づき管理経営されている森林その他の採取地に由来するものであること。
    3. 伐採・採取に当たって、生態系が保全され、泥炭地や天然林を含む環境上重要な地域が適切に保全されており、また、森林の農地等への転換に由来するものでないこと。
    4. 森林等の利用に当たって、先住民族や地域住民の権利が尊重され、事前の十分な情報提供に基づく、自由意思による合意形成が図られていること。
    5. 伐採・採取に従事する労働者の労働安全・衛生対策が適切にとられていること。
  3. 上記2(2)の1~5を満たすバージンパルプを使用した紙として、 FSC、 PEFC(SGECを含む。)の認証紙が認められる。これらの認証紙以外を必要とする場合は、バージンパルプの原料となる木材等について、別紙に従って1〜5に関する確認が実施されなければならない。
  4. サプライヤーは、伐採地までのトレーサビリティ確保の観点から可能な範囲で当該紙の原材料の原産地や製造事業者に関する指摘等の情報を収集し、その信頼性・客観性等に十分留意しつつ、上記2を満たさない紙を生産する事業者から調達するリスクの低減に活用する。
(提言)
  • 「森林の農地等への転換に由来するものでないこと」だけではなく、農地だけではなく、産業植林地への転換によって、天然林が失われてしまうので、「天然林の植林地への転換に由来するものではないこと」「天然林の減少・劣化を引き起こすものでないこと」を追加すべき。
  • サプライヤーには、森林破壊ゼロを誓約し、NDPE方針の採用と遵守を求め、実施状況の報告することを求める必要がある。NDPE方針の適用は、調達対象とする製品レベルではなく、サプライヤー企業レベル、サプライヤー企業グループレベルで適用することを求める必要がある。
  • 2-④は、合意形成ではなく、ライツホールダーとしての先住民族からの同意を得る必要があり、そのためには、それを証明する独立監査が必要である。
  • 認証紙であってもデュー・デリジェンスを実施し、上記①〜⑤を満たしていることを確認する(認証を取得することが上記①〜⑤を満たすことにはならない)
  • FSCから絶縁措置(Disassociation)を受けている企業グループについては、たとえPEFCを取得していても、NDPE方針を採用していても、調達対象とすべきではない。
  • NDPE方針の採用と実施によるリスク評価が必要。
  • トレーサビリティが確認できない場合には、それ自体がリスクとして調達を回避する必要がある。そして、当該紙の原材料の原産地や製造業者に関する指摘などの情報を収集し、人権侵害や森林破壊に関与している企業を排除する必要がある。→「可能な範囲で〜情報を収集」するだけでは弱いため、例えば東京都のグリーン購入ガイド(2022年度版)で規定されているように、「認証対象から排除する措置を受けている者がサプライチェーンに関わる場合を除く」(具体的にはFSCによる断絶措置が適用されている場合には対象から除外する)などの水準を設ける。

パーム油基準への提言

(37ページを参照)
2. パーム油について、持続可能性の観点から以下の①~④が求められる。
  1. 生産された国又は地域における農園の開発・管理に関する法令等に照らして手続きが適切になされていること。
  2. 農園の開発・管理において、生態系が保全され、また、泥炭地や天然林を含む環境上重要な地域が適切に保全されていること。
  3. 農園の開発・管理において、先住民族等の土地に関する権利が尊重され、事前の情報提供に基づく、自由意思による合意形成が図られていること。
  4. 農園の開発・管理や搾油工場の運営において、児童労働や強制労働がなく、農園労働者の適切な労働環境が確保されていること。
上記の1~4の考え方に沿ってパーム油の生産現場における取組を認証するスキームとして、ISPO、MSPO、RSPOがある。
  1. これらの認証については、実効性の面で課題が指摘される場合があるものの、小規模農家を含め幅広い生産者が改善に取り組むことを後押しする観点から、これらの認証を受けたパーム油 (以下、「認証パーム油」という。) については、別紙内容を確認した上で、原則活用できることとする。
  2. 上記(1)の認証パーム油については、流通の各段階で受け渡しが正しく行われるよう適切な流通管理が確保されている必要がある。
  3. 上記(1)の認証パーム油の確保が難しい場合には、生産現場の改善に資するものとして、これらの認証に基づき、使用するパーム油量に相当するクレジットを購入する方法も活用できることとする。
  4. 博覧会協会は、ISPO、MSPO、RSPO を活用可能な認証として位置づけることが適当であることを確認するために、これらの運営状況を引き続き注視する。
  5. 上記の3つの認証と同等のものとして博覧会協会が認める認証スキームによる認証パーム油についても同様に扱うことができるものとする。
認証パーム油以外を必要とする場合は、農園までのトレーサビリティが確保されており、上記2について別紙に従って確認されたものも活用できることとする。
(提言)
  • 生産国政府が主導して構築されたISPOやMSPOはすべての生産者に取得が義務づけられているものであり、基本的には合法性を追認するものに過ぎない。つまり、①〜④の持続可能性に関する条件を必ずしも満たしているとは言えない。実際にこれらの認証を受けている農園においても環境社会問題が報告されている。そのため、ISPOやMSPOは全て除外すべきである。
    認証基準の比較はこちら:
    https://palmoilguide.info/wp-content/uploads/2020/09/final.pdf
  • また注5に記載のあるMB(マスバランス)や(3)にあるクレジットについては、環境社会問題のリスクが高い非認証パーム油の混入を認める制度であるため除外すべき。
  • 認証油以外のもので農園までのトレーサビリティが確保できているパーム油に対して、条件として、収穫されている農園や関連する企業グループがNDPE方針を達成していることを確認すべき。RSPOのSGではない場合には、MBに混入される油が、全て、NDPE基準を満たす調達先から調達されているものとすべき。NDPE方針の遵守をサプライヤーに義務付け、サプライヤー企業グループ全体にNDPE方針を遵守することを確認していることが必要」と追加すべき。
  • 認証油であっても、調達元の企業グループにおいて人権侵害や森林破壊に関する基準違反が指摘されている可能性があるので、ケーストラッカーで、苦情状況を確認するデューデリジェンスを追加すべき。
    参考:RSPO苦情の状況
    https://rspo.my.site.com/Complaint/s/casetracker
  • ③において、合意形成ではなく、ライツホールダーとしての先住民族からの同意が必要とすべき。